噛み合わせ

総合歯科診療の礎となる考え方
噛み合わせ=「どこで、どうやって噛んでいるか」の重要性
噛み合わせ外来のご案内

 
虫歯の原因は汚れ(虫歯菌)だけ?
 
「何でちゃんと歯医者に通っているのに虫歯になるの?」
「ねぇ、ちゃんと歯磨きしているのに何で虫歯になるの?」
こんな声をよく耳にします。
 
しっかり歯磨きもしているし、メンテナンスもしているのに虫歯になってしまう
 
このことから分かるように、虫歯の原因は細菌だけが原因ではないことが多いのです。
 
仮に細菌のみが原因であれば、その場合お口の中の虫歯菌は、お口の中全体で悪さをします。それなら、すべての歯が同時に虫歯になるはずではないでしょうか? でも、そんな方はあまりいません。それは、いったいなぜでしょうか?
 
それは 噛み合わせの不調和が原因なことが多々あります。
 
例えば「左側の噛み合わせに違和感があったり、左側の詰め物や被せ物に高い所があったりすると、人間は無意識に正しい噛み合わせからずらすようにして、右側の歯で噛む」ようになります。その結果、左側をかばうために過度の負担がかかった右側の歯が虫歯になるといったケースが多く見られます。そのときに、虫歯になった右側の歯をただ治療しても、その場しのぎの治療であり、根本的な解決にはなりません。それはただ一時的に穴に「フタをしただけ」の状態です。
また、そのことにより、頭痛や肩こり、不定愁訴が起きたり、顎が痛くなったり、歯ぎしりが顕著に見られるようになったりして全身の不調和を招くといっても過言ではありません。
 
歯医者にしっかり通って治療跡がたくさんあったり、詰め物、被せものがたくさんあったり、歯が抜けてそのままのところがあったりするとますます噛み合わせが崩れていきます。しっかり治したつもりでも、原因を取り除かなければ、歯は崩壊への道を辿ります。
 

ではどうしたらよいのでしょうか?

 
そのためには噛み合わせの検査をする必要があります。
そもそも正しい噛み合わせを診断するには、患者さんが自分自身で「カチカチ、グリグリ」している位置では診断ができません。
 
中心位という筋肉に力が入っていない(患者さんが力を抜いた時の)顎の位置=ニュートラルな顎の位置で診断することが大切なのです。噛み合わせの関係が悪い人はこの中心位という位置では上の歯と下の歯が全体で当たらないので、そこからずらした位置で噛んでいます。均等な力がかかっていないと過度な力がかかっている所から壊れていきます。
 
力を抜いたところは、顎としてニュートラルな正しい顎の位置といえます。そこでは噛めないので顎の位置をずらして噛まざるを得ないのです。力をぬいて楽にしている時は誰でも上下の歯は噛んでいなくて、この中心位に戻ります。
 
歯科の疾患は「3大疾患」と言われております。その中で「虫歯」「歯周病」はあまりにも有名ですが、基礎となる「噛み合わせ」に関してはないがしろにされているのが現状です。
 
その噛み合わせの悪さを治さないまま何となく悪くなった場所だけを治療していくのは、ただ「フタをしただけ」も同然です。
やがてまた虫歯は再発したり、何度も繰り返し詰め物や被せものが取れたりします。
 
噛み合わせが悪いまま放っておくと「強く当たっている部分」と「全く当たってない部分」がでてきます。強く当たっている部分はマイクロスコープ等で20倍以上に拡大すると微細なヒビ(マイクロクラック)が多数見られます。そのマイクロクラックより虫歯菌の方が小さいので、そこを通じて知らずしらずのうちに虫歯菌がマイクロクラックの隙間から歯の中にじわじわと入りこんできます。それが神経にまで及ぶと、突如として激痛に見舞われたり、歯が急に割れたりします。
 

噛み合わせ外来の治療の手順

 1:問診&カウンセリング

まずお話しをしっかり伺います。どんなことに悩んでいるのか、今までどんな治療を受けてきたのか、そもそも現在の症状は噛み合わせとどれくらい関連があるのか、過度なストレスは無いのか等、ライフスタイルを含めて細かいところまでお話し下さい。

 2:画像検査

パノラマエックス線を用い、現在の歯の状態、顎関節の状態や形態等確認していきます。
症例にもよりますが、CT検査をして顎関節の三次元的な位置関係や形態を確認する場合があります。

 3:マイクロスコープによる口腔内の診査・記録

現在の歯や歯茎の状態を確認致します。虫歯、歯周病はもちろん、歯並びや、微細な歯のヒビ(マイクロクラック)までマイクロスコープを用いて確認していきます。肉眼で見落としがちな小さなことまでマイクロスコープと画像記録システムを駆使することにより細かく確認し、動画として記録しておくことができます。

 4:開口路の検査

顎がどのように開くか、どれくらい開くか、診査していきます。顎の関節は人間の身体の中の関節で唯一身体の中心をまたぐ関節です。従って左右の顎の関節の状態が良好であれば顎は真っすぐ開くはずです。この検査では顎がどちらの方向に曲がっているのか等、精査し記録していきます。

 5:触診

顎の周囲から首にかけての筋肉のツボのような部分を押していきます。この時の痛みのレベルを記録していきます。触診で痛みがあるということは、わかりやすく言うと、言わば「筋肉痛」の状態です。顎の状態や噛み合わせの状態の悪さの代償が筋肉にきていると痛みを生じます。
 
急性症状がある場合は緊急的な処置(エマージェンシー)な処置を行います。
 
ここまでの検査で、現在の症状が噛み合わせと関連しているという診断が下され、患者様に明確な治療の意思があれば治療を開始致します。
 

模型による噛み合わせの診断

上下の歯型、頭の位置に対する歯の位置関係、ニュートラルな位置の噛み合わせ、いつも噛んでいる位置の噛み合わせの記録をとります。これを咬合器という特殊な器械につけてお口の外で患者様の顎の動きを再現し、分析していきます。
 

ソフトスプリント(柔らかい厚めのマウスピース)

通常の歯科医院で作成するマウスピースは「対処療法」用のマウスピースです。当院で作成するマウスピースはあくまで「治療用」のマウスピースです。今までのマウスピースとは基本的な概念が異なります。診査・診断に基いた患者さんそれぞれの情報が入っているマウスピースです。
 
ソフトスプリントを使用するメリット

  1. 顎の三次元的な位置関係を理想的な位置に持っていける
  2. 筋肉のリラクゼーションが計られる
  3. 咬合調整のときにニュートラルな位置に誘導しやすい

 

ブラッツクスチェッカーを装着する

睡眠時のブラキシズム時の咬合接触部位は普段の噛み合わせとは異なる無意識下の運動なので診察室では観察することはできません。
そこで、ブラックスチェッカーというフィルム状の極薄のマウスピースを睡眠時に付けて頂くことにより、寝ているときどこが強く接触しているのかを分析します。
現在、睡眠時の記録を正確かつ簡便に記録できるのはこのブラックスチェッカーしかありません。
 
・ブラックスチェッカーを用いて睡眠時の噛み合わせの状態を記録し、それを分析することによってはじめて歯ぎしりのパターンを知ることができます。
 
・睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)はストレス発散の手段なので止めさせることはできません。しかし、歯周組織や歯自体に問題を起こす歯ぎしりパターンを、ダメージを起こさない歯ぎしりパターンに変えることは可能です
患者様には2枚のブラックスチェッカーをお渡し致します。それぞれ別の日に装着して寝て頂きます
 
 
 
ここまでやって初めて調整していく部位がわかります。逆にこの手順を踏まずに、いつも噛んでいる位置(カチカチ、グリグリの位置)で調整をすること自体が非常に危険な行為で、場合によってはさらに症状が悪化していきます。従って、顎関節やその周囲の筋肉に異常がある患者さんに対しては、普段噛んでいる位置(カチカチ、グリグリの位置)ではなく、筋肉がニュートラルな位置、すなわち「中心位」で調整していかなければいけないということです。
噛み合わせを調節しながら顎が安定する位置を探していきます。噛み合わせの調整というと削るばかりを想像する方が多いと思います。もちろん高いところは削ります。しかし足りない所は足さなければなりません。調整は「マイナス」だけではなく「プラス」の発想も欠かせないのです。
また、回数が何回かかるかですが、かなりの個人差があります。症状が重い程、症状があった期間が長ければ長い程時間がかかりますので、一概に何回とは断言できません。
症状が重い場合ではハードスプリント(硬めのマウスピース)を装着するケースも稀にあります。これは顎位(顎の位置)にかなり大きなずれがあり、ソフトスプリントでは対応しきれないケースです。このハードスプリントにはソフトスプリントより厳密な患者さんそれぞれの情報が入っております。
ハードスプリントに関しては世の中で幅広く使用されており賛否両論あるようですが、「漠然と入れているハードスプリント」=「間違った情報が入ったハードスプリント」なので、顎関節症を軽減させるばかりか、却って悪化させているケースを多く目の当たりにしますので注意が必要です。
 
調整の結果、顎の安定する位置にきたら

  1. 詰め物、被せ物のやり直し。噛み合わせを作り直す(咬合面再構成)

 

  1. 矯正治療の必要があれば矯正治療

 
と治療のステップが進んでいきます。